レシートキャンペーンの不正行為に注意!
レシートを購買証明として利用するWEBキャンペーンは、消費者と企業の関係を深める手段の一つとなっています。特にスマートフォン応募が普及し、ハガキの単価も上がっている昨今では、この仕組みの需要はますます高まっています。
しかし、中にはレシート改ざんなどの不正行為が横行し、正当な参加者と企業の双方にとって不利益となる事例も増えているのが現状です。
この記事では、レシートキャンペーンの不正行為について、具体的な事例を紹介し、リスクについて考察します。
この記事の目次[非表示]
- 1.不正方法
- 1.1.複製やデータの書換え
- 1.2.別の個人を装った複数アカウントを作成
- 2.キャンペーン応募におけるレシート改ざんの事例
- 3.不正行為が多くなるキャンペーンとは
- 3.1.即時抽選型
- 3.2.デジタル完結型(賞品がデジタルギフト)
- 3.3.山分け型(応募者で分配)
- 4.不正行為への対応策
- 4.1.なるべく実施すること
- 4.2.場合により検討すること
- 4.3.キャンペーンの仕組みを検討すること
- 5.まとめ
不正方法
様々な手法で行われるレシート改ざん。一般的なケースとして、以下の方法を同時に使用することが多いようです。
複製やデータの書換え
最も一般的な不正行為の一つは、レシートの複製や加工です。これによって参加条件を満たしているかのように見せかけ、不正に景品や特典を獲得しようとする詐欺行為が行われます。
チェーン店で応募に必要な対象商品を購入したレシートを用意し、そのレシートを撮影した画像を加工することで、あたかも別のチェーン店や日付で購入したかのように偽装する方法や、対象商品を購入していないレシートを加工して、対象商品を購入したかのように偽装する方法です。 応募方法がデジタル化したことにより、より不正が多く発生しています。
別の個人を装った複数アカウントを作成
一人の参加者がフリーメールアドレスを利用して、複数のアカウントから同じキャンペーンに参加することも問題になっています。
この場合、キャンペーン運用の観点では、複数アカウントからの応募が特定の個人かどうか判断することに時間やコストが多くかかります。また、キャンペーン参加者の観点では、正規の応募者が不当に差し引かれることになります。
キャンペーン応募におけるレシート改ざんの事例
レシート画像の不正改ざんにより、高額な特典を手に入れるケースや複数の特典を得ようとする不正行為が相次いで報告されています。ここでは報道で大きく取り上げられた事例や実際の不正レシート例を解説します。
事例:電子ギフト券500円分当たるキャンペーン、当選者の99%が不正な応募
問題発覚後の記事
『京都市は28日、マイカーと公共交通を乗り継ぐ「パークアンドライド」の利用者に抽選で電子ギフト券500円分を贈るキャンペーンで、当選者のうち99%が不正な応募だったと発表した。
キャンペーンは紅葉シーズンの混雑対策として、11月1~30日に京都市内外の駐車場7か所の利用者を対象に実施。スマホなどを使い、駐車場のレシートを撮影して専用サイトから応募する手続きで、当選すれば、買い物に使える500円分の電子ギフト券がその場で手に入る仕組みだった。
当初は低調に推移したが、同23日だけで1000件以上の応募が殺到。委託事業者が調べると、総応募1298件のうち15件以外は、アニメキャラクターなど無関係な画像が添付されていた。画像を事前にチェックしないまま当落を決める仕組みになっており、市は当選した1005件のうち992件(49万6000円)が不正とみている。』
電子ギフト券500円分当たるキャンペーン、当選者の99%が不正な応募…京都市.讀賣新聞.2023-12-28,讀賣新聞オンライン, https://www.yomiuri.co.jp/national/20231228-OYT1T50180/ ,(参照2024-01-23).
実際のキャンペーン仕組み
京都市の見解
キャンペーンの応募状況
パークアンドライドの利用件数は、11月の実績で1,256件(速報ベース)であった。一方で、同期間に行ったキャンペーンの正当な応募は15件に留まりました。これは、500円という景品の金額に比し、応募条件が5つ設定されていることによる手続きの煩雑さに起因したものと思われます。
今後の対応
今回の事案に関して、不正とみられる応募による当選については、応募要項に基づき無効としています。
その上で、委託事業者と協議の上、警察や弁護士などの専門家に相談しながら、無効となった当選景品の取得者に対し、その返還を求めるとともに、必要な対応を講じていきます。
※ 詳細はこちらをご覧ください
京都市は、「その場でギフト券を発行できるメリットを優先し、事前チェックの必要性まで十分に検討しなかった。不正の想定まではできていなかった。」と回答されています。
消費者への利便性を考慮した判断ですが、それに伴うリスクが想定よりも、はるかに大きくなってしまいました。不正応募はデジタル化が進んだことで、より発生するリスクが高まっています。
事例:不正レシート
このような偽装が確認されています。
① 上部の日付を差し替え、あたかも折りたたんだように見せかける。
合計から下はカットし、店舗名をわからなくする。
② 完全に店舗名や電話番号も書き換えて、別の店舗からの購入と見せかける。
一見すると正しいレシートと見分けがつきづらいところまで、手口が巧妙になってきていますので、抽選時にはより注意が必要になってきています。
不正行為が多くなるキャンペーンとは
では、どのようなレシートキャンペーンで不正行為が発生する可能性は高くなるのでしょうか。過去の運用ケースから不正が多くなるポイントを説明します。また、これらが組み合わさることでリスクに発生確率が上がる、または不正件数が増えるという認識が重要になります。
即時抽選型
対象商品を購入したレシートをアップロードして、その場で抽選して当落がわかるキャンペーンです。その場で結果がわかるので、何度も偽装したレシートで応募するケースが多くなります。
デジタル完結型(賞品がデジタルギフト)
抽選方法は即時抽選と後日抽選の2通りがあります。即時抽選の場合は画面上に表示された当選URLより、電子ギフト券を取得します。後日抽選の場合は、メールやPush通知、SMS(ショートメッセージ)通知等から電子ギフト券を取得します。
デジタルギフトはコストも抑えられユーザーにも好評ですが、住所など個人情報を取得しないため、不正に賞品を得ようと考える者から比較的狙われやすくなります。
山分け型(応募者で分配)
対象商品を購入したレシートで応募し、総額〇〇〇万円など、電子ギフト券などの金券を全応募者で山分けするキャンペーンです。レシート画像が偽装され、何度も違うレシートをアップロード、応募が行われます。複数アカウントを作り別々のアカウントで賞品を狙うといった、手の込んだ応募まで起きています。
不正行為への対応策
キャンペーンにおける不正行為は、企業と消費者の信頼を損なう深刻な問題です。企業はデジタル技術や厳格な対策を通じて、これに対抗していかなければなりません。
なるべく実施すること
参加者の身元確認の強化
メールアドレスの利用を避ける。特に使い捨てのフリーメールアドレスは誰でも利用でき、基本的にはその場限りで、キャンペーン終了後には消されてしまうなどロイヤルユーザーになることはまずありません。
ただし、個人で利用している一般メールアドレスとフリーメールの区別はドメインのみで判断せざるを得ないので、そもそもメールアドレスの登録ではなく、LINEやGoogle・YahooアカウントなどのOAuth認証を利用するのがおすすめです。
利用制限をする
OAuth認証を利用すれば、1日1回など応募回数を制限し、連続した不正応募のリスクを大幅に軽減することができます。
メールアドレスでも応募回数制限は可能ですが、botなどを利用して制限内で複数応募されてしまうケースもありますので注意が必要です。
消費者への啓蒙とルールの掲示
正当な手段での参加と不正行為への厳罰を啓蒙する活動を行います。また、キャンペーン参加時には明確なルールを提示し、改ざん行為のリスクや罰則を明示することで、誠実な参加を促します。
キャンペーン応募要項などの記載例:
- 応募に関して不正な行為があった場合、ご応募および当選権利が無効となります。
- 不正行為もしくは違法行為により、弊社または第三者に損害を与えた場合、応募者はその損害を賠償しなければならないものとします。
- レシートの内容を再確認させていただく場合がございますので、ご応募に利用されたレシートは、お手元にて保管いただけますようお願いいたします。 など
場合により検討すること
バーコードや商品使用シーンを撮影した画像も登録してもらう
改ざんされたレシート画像での不正応募を防ぐための対策として、レシート画像と併せてバーコードや対象商品を使用しているシーンを撮影した画像を登録してもらうことが効果的です。これにより、不正な画像が提出されるリスクを減少させることができます。バーコードは商品情報を含んでおり、商品使用のシーンを写した画像は商品を実際に使用した証拠として機能します。
即時抽選を避けて後日抽選にする
即時抽選の場合、レシート情報をOCRで解析した結果から、レシートの内容が応募条件を満たしているかを判定し、自動抽選を行います。抽選結果は参加者にその場で通知されます。そのため、システムの穴をかいくぐってしまった不正応募については、抽選の対象となり、当選する可能性があります。特にキャンペーンの形態が個人情報を取得しないもので、賞品がデジタルギフトの場合、当選通知後に不正応募に気づいても、既に提供済みの賞品の返却を求めることは困難です。
一方、抽選方法を後日抽選にすれば、レシートを目視で確認した上で当選者を決定することができるため、レシートの細かい加工についても気づくことができる可能性が高くなります。厳正な審査の結果、当選者として選出された参加者のみに賞品をお届けするという方法は、不正応募の対策として有効だと考えられます。
金額の大きいものは保証書も登録してもらう
家電など金額の大きい商品を対象としたキャンペーンでは、レシートだけでなく保証書も登録してもらうのがおすすめです。製造番号を確認することで、応募情報のユニーク性を担保することができます。 また、より厳密に不正応募の対策をするということであれば、保証書に記載されている製造番号が実際にメーカーから出荷された製品の製造番号と一致するかを確認するということも可能です。
キャンペーンの仕組みを検討すること
パターンマッチングやアルゴリズムを利用して不正検知する
過去の偽装レシートからパターンマッチングや機械学習のアルゴリズムを使用して、異常なパターンや改ざんの痕跡を検知することが可能です。これにより、不正なレシートを検出します。検出されたデータは目視することにより、厳密に判断が可能となります。
シリアルナンバーを使ったキャンペーンに切り替える
導入が可能であれば、購買証明にシリアルナンバーを利用する仕組みの方が、不正を防ぐ確率は上がります。キャンペーンで利用されているシリアルナンバーの推奨される桁数は「応募者がランダムに入力した場合、約100万分の1の確率で該当のシリアルナンバーとなる桁数」とされています。
レシート応募と比較すると、シリアルナンバーの発行、シールの印刷・貼付けなどのコストが発生しますが、不正応募対策としては有効な手段です。
まとめ
本記事では、レシートキャンペーンにおいてどのような不正が行われているかとその対策についてご紹介しました。
レシートキャンペーンは販売促進に適した施策ではありますが、不正応募の対策がしっかりとなされていないと、企業側のプロモーション効果が得られないだけでなく、正当なキャンペーン参加者の不利益、ひいては企業イメージを損ねるといったことが考えられます。
是非、本記事を参考にして、不正応募への対策をご検討ください。
シリアルキャンペーンやOAuth認証を用いたキャンペーンの実施をご検討中の方や、不正応募の対策がされたキャンペーンシステムをお探しの方は、是非デジタルラインまでご相談ください。